耳に届く、ただ楽しそうな会話の声と、食器の擦れる音。


それを耳にしながら、早く食事を終えようとしていると、一人の麗人が扉を開いて現れた。


本家の住人でこの席に出席する選択をした者の一人、そしてローズの従姉妹、ジュエルだった。

化粧によって飾られた派手な顔、身に纏う美しい青のドレス。
ローズより二つほど上の彼女は、容姿だけを評価すれば優雅であり妖艶さも兼ね備えた、美女の部類に入るだろう。


部屋に入りローズを目にとめると、彼女は口元を歪めてみせた。









「あら、“人殺し”もいたの?」








ローズはただ無表情に目線だけ彼女に向け、逸らしてから頭だけを下げてやった。




(わかってて言ってきたわね、この女)



内心腸が煮えたぎって仕方ないが、ここでブチ切れたところでさらに状況が悪化するだけなのはわかっている。

それに兄の手前でもある。

たしなめるようにジュエルの名を呼ぶライの声をききながら、ローズは怒りを飲み込み、グラスに注がれたワインで流し去る。



しかし、ジュエルは席に着いたあとも、構うことなくせせら笑うように続ける。