「どうして?」


聞き返された言葉に、ローズは思わず体を震わせた。


どうすれば傷つけずに、きけるのか。
必死に考えながら、言葉を選ぶ。


「……知りたい、から…」


視線を落とした、床の世界に。


耳に届いたのは、深いため息だった。


(やっぱり、傷つけてしまった)


死んだ父のことを。


兄の中では、まだ消化されていないのだ。とはいっても、ローズ自身、それがどうすれば可能なことなのか見当もできないことだが。

自分に焦点をあてて考えれば、自分が“人殺し”と呼ばれて蔑まれていること。
それを、自分だって消化しきれていない。


途端にローズの中で後悔の念が浮かび上がった。


部屋の空気が重いのを肌で感じる。

自分の中の、未消化の誰にもさらせない心の奥底を言葉にできない感覚を、自分も知っている。わかっている。

誰にも触れさせたくないところだ。


でも、知りたいと思う自分がいる。
きかずにはいられない自分がいる。

発作的に生まれてしまったそんな自分。
普段なら、無視して黙殺してしまうそんな自分。


(きっとこんなところに来てしまったから、無視できないのよ)


八つ当たり的にそう思っても、自己嫌悪はどうにもやめれない。



長い沈黙が続いた。