しかし―――、


瞬間、彼の体に激痛が走った。
それは、何故だったのか。

彼はその場に蹲り、痛みの元へと手を這わせた。
その位置は、心臓の真上――。


バシャバシャと水を打つ音がして、間もなく屋敷の玄関扉が開かれた。
言うことを聞かない重い体にかわりにそちらに目を向け、また激痛の波が彼を襲った。


「っ――」


そして―――、



愛らしい産声が高々と響いた瞬間、彼は痛みの中に沈んだ。


それは運命の悪戯か、それとも偶然の悲劇か。



―――その日、当主の兄の娘――ローズ・ヴィオラが誕生した時、当主――タイム・マーレンは、周囲の期待に反し、短すぎるその生涯を終えた。