(やっぱり、きいてはいけなかったのかもしれない。でも、今しかない気がする)


ローズは夢を思い出した。


苦い夢。
苦しい夢。


私は“人殺し”。


なぜかその呪わしい言葉をきいた瞬間、いつも結びつくのは亡き先代――兄の実父だった。
この本家で一番身近な死――それは、先代のそれしかないからだろう。


「お兄様も、よく知らないかもしれないけど…」


ブルーの生い立ちについては、一族の大半がよく知っている。

その存在が明らかにされたとき、大きく波紋を生んだのだ。

今はそれほど問題にされていないとはいえ、未だに疎ましく感じている人間がいるのは、人の憎悪に敏感なローズには簡単に感じ取れた。


「どういう人、だったの?」


先代をどう思っているの?


どうして、ヴィオランドの家に――私の家に、養子に来たの?


私や父のことを、本当はどう思っているの?




ローズは視線を落としたまま、問いかけた。