そうして落ち着いてから、ローズはふと思いつく。


ずっと胸に抱えていた、疑問。


それを今更思いついたのは、きっと夢を見てしまったからだろう。
なつかしくも、苦い夢を。


「ねぇ、兄様」

「何?ローズ」


優しい笑みを向けてくる兄。
その笑みに、ローズは思わず口を閉じた。

ききたいことがあった。ずっと昔から。
多分、初めて出会った時か、その前後から。

ただ、それを口にするのは憚られた。

なぜならそれは、兄の心の奥底に踏み込むことになってしまうと予想がついたからだ。だからローズは、ずっとため込んでいた。


たった一つの疑問。


今聞くべきか、自問する。


そして、聞くべきだと、自答した。


心が定まればあとは進むだけ。




ローズはゆっくりと部屋に佇む従者へと目を向けた。
目があった従者が、表情を引きつらせるのがわかる。が、それはスルーだ。

ローズ自身、それを狙った。

狙って、笑みを向けた。


それはもう、極上の。光も霞むくらい、眩い笑顔を。