「何かしら、お兄様?」

「そうグラースを責めないでやってくれないかな。グラースを止めたのは、僕だから」

「え、ブルー兄様なの?」


ローズは驚いて兄へと目を向けると、彼は笑顔で首肯する。


「そうだよ。僕がやがったんだよ」

「やがる?」

「そう。ローズの寝顔を、見てほしくなくてね」


ローズがその言葉の意味を解するのに、三秒かかった。


そしてその意味を頭で理解した瞬間、ローズは自分の顔が熱を帯びるのを感じた。


「は、え、に、兄様っ!?ええっ!?」

「ははっ。真っ赤だよ、ローズ」

「はあ!?」


ローズは両頬を手で覆いながら、狼狽える。
予想外の兄の言葉に、すっかり動揺していた。

なんとか落ち着こうとゆっくり呼吸を繰り返す間も、楽しげな笑い声が耳に届く。


必死に動揺を抑えながら、ローズは楽しげに笑う兄の顔をきっと見上げた。


「兄様っ」

「ああ、ごめんごめん。でも、きっとローズは嫌がるだろうと思ったから」


それまで手の上で開いていた本を閉じながら、ブルーは言う。


確かにその通りだった。


ローズは深く息をついた。