「久しぶりだなあ。愛しの兄に会いにでも来たのか?」


表面上は友好的にこちらに歩み寄ってくる、男。


ローズは目も合わせず、さらりと返答する。


「貴方には関係ありませんよ、ガーネット様。ところで、いつまでこちらにいらっしゃるのですか?」


目の前で、青年・ガーネットの綺麗に形が整った眉が歪む。

時に綺麗なものは、わずかな歪みで雄弁に内心を周囲に知らせるものだ。


「大学にはいつお戻りで?」


ガーネットは教授の覚えがめでたくなく、今は休学して実家に戻っているというのは有名な話だ。
この屋敷でも腫物扱いされている部類だ。
嫌な意味で、ローズと立ち位置が同じなのだ。



「文句でもあるのか?」

「いいえ、めっそうもない」


低い声できいてくるガーネットに、ローズは首を振ってこたえる。


それでも、相手には癇に障ったらしい。


「よくもぬけぬけと」


広かった距離が埋まり、残り一歩まで縮まる。