部屋を後にしたローズは、緩んだ表情をさめざめとしたものへと切り替えた。


この屋敷の空気の所為だ。
この空間で、ローズは気を抜くことを許されない。そこにいるだけで、毒に蝕まれている心地がするのだ。


いや、空気だけじゃない。


むしろ、積極的にそうさせるのは――、



「あ」



毒、をはらむ声色。



ローズの視界に現れたのは、この屋敷の住人だった。


彼女にとっては従兄弟にあたる、当主に似た容姿の青年。年齢はローズより上だが、身長は低めなので外見だけではローズと同じくらいに見えなくもない。


「これはこれは」


ローズを見て、歪む唇。
卑下するような目つき。


毒々しさが、形になる。