「こんにちわ。会いたかったわ、酔狂なお兄様。ご満足いくほど勉強はできたかしら?ねぇ、この私がわざわざ出向いたほどですもの。今すぐ帰ってもぜんっぜん平気よね?」


間違いなく恐喝ととれる動作でありながら、ローズはあくまで百点の笑顔で問いかけた。

そんなローズを見て、ブルーはおだやかに微笑んだ。


「そのことだけどね、ローズ。明日まで待ってくれないかな?まだ読み切れなくて」

「冗っ談じゃないわよっ!!即刻かえる準備をして帰るのよっ。こんなとこ、大っ嫌いなの!!」


ものすごい剣幕で言い切ると、さすがに少し酸欠気味になってローズは荒く呼吸を繰り返した。
呼吸が落ち着いてから、ぐっと顔を上げて兄をにらんだ。


「わかった?」

「…ローズ。君の素直なところはいいところだと思うけど、我儘はよくないよ。グラースを困らせたりするのもね。ちなみにグラースは、先に客室に行ってもらったよ」

「客室!?」


部屋まで用意されたら、終わりだ。

ローズはどうにもならない展開に、すっかり勢いをなくした。

それから、浮かぶのはこの屋敷の人間のこと。
それだけじゃない。
これから起こりうるだろう、ことにも――。


ローズが顔色をかえて黙り込んだので、ブルーは彼女の顔に両手を添えてその顔を覗き込んだ。
その顔が青く見えて、ブルーは驚いた。