「ローズ」
声をかけられ、ローズはあくまでさらっとライへと視線を戻す。
「お父上は元気かい?」
「ええ、ご心配なく。相変わらずです。ところで、義兄はどちらの部屋にいるのです?」
「ああ。あれの――父の部屋、だよ」
当主の返答に、ローズは思わず口を閉じた。
それは、予想した通りの答えでもあった。
ローズの兄、ブルー。血の繋がらない義兄。
彼の父の部屋、それが表すのは――亡き前当主の部屋。
ブルーの父、タイム・マーレンと、ローズの父、カシス・ヴィオランドは双子の兄弟だった。
家を出たカシスと違い、タイムは当主としてその座についた。
タイムは当主として立派に生きていたが、妻ももたず、子もいなかった。
謎の死を遂げるその日まで。
ブルーがマーレンの家に現れたのは、その死後であった。
ブルーの生い立ちは、少し複雑だ。
ブルーはかつてタイムが大学に通っていた頃、内密に付き合っていた女性との間にできた子で、当主の座に就くと同時に別れていたタイムには、子がいたことすら告げられていなかった。
カシスが仕事先で面立ちの似たブルーと出会い、その生い立ちを知って、引き取った。数年前に母をなくしていたブルーは、その時すでに天涯孤独であったのだ。
その頃には代替わりを済ませていたとはいえ、ブルーに対する本家の扱いはひどいものだった。
マーレン家の人間とは認められず、本家への立ち入りも許されなかった。
しかし、本人に本家を継ぐ気はなく、カシスの子として生きる意志が固まっていたのが次第に周囲に知れ渡り、今では本家の立ち入りも許されるほどになっていた。
(会うこともなかった父とはいえ、やっぱり気になるわよね)
ローズは胸の内でぽつりとつぶやく。
声をかけられ、ローズはあくまでさらっとライへと視線を戻す。
「お父上は元気かい?」
「ええ、ご心配なく。相変わらずです。ところで、義兄はどちらの部屋にいるのです?」
「ああ。あれの――父の部屋、だよ」
当主の返答に、ローズは思わず口を閉じた。
それは、予想した通りの答えでもあった。
ローズの兄、ブルー。血の繋がらない義兄。
彼の父の部屋、それが表すのは――亡き前当主の部屋。
ブルーの父、タイム・マーレンと、ローズの父、カシス・ヴィオランドは双子の兄弟だった。
家を出たカシスと違い、タイムは当主としてその座についた。
タイムは当主として立派に生きていたが、妻ももたず、子もいなかった。
謎の死を遂げるその日まで。
ブルーがマーレンの家に現れたのは、その死後であった。
ブルーの生い立ちは、少し複雑だ。
ブルーはかつてタイムが大学に通っていた頃、内密に付き合っていた女性との間にできた子で、当主の座に就くと同時に別れていたタイムには、子がいたことすら告げられていなかった。
カシスが仕事先で面立ちの似たブルーと出会い、その生い立ちを知って、引き取った。数年前に母をなくしていたブルーは、その時すでに天涯孤独であったのだ。
その頃には代替わりを済ませていたとはいえ、ブルーに対する本家の扱いはひどいものだった。
マーレン家の人間とは認められず、本家への立ち入りも許されなかった。
しかし、本人に本家を継ぐ気はなく、カシスの子として生きる意志が固まっていたのが次第に周囲に知れ渡り、今では本家の立ち入りも許されるほどになっていた。
(会うこともなかった父とはいえ、やっぱり気になるわよね)
ローズは胸の内でぽつりとつぶやく。