ローズの胸中は大荒れだった。

玄関正面の階段をのぼり、前方と左右に分かれた廊下の正面側の廊下に入り、ローズは屋敷の最奥へと案内される。
廊下はひたすら長かった。
ローズの暮らしている屋敷と比較しても、倍以上はあった。それに関しては暮らしている人間の数が違うのも、一つの要因になるかもしれないが。
長い廊下には、風景画、人物画、神話をモチーフにしたもの、幾何学なもの――さまざまな絵画が等間隔で、美しい細工のなされた額縁に飾られていた。
それはどれも一度は本や新聞などで見たことがあるような、有名なものばかり。お金やら何やら、いろいろかけて手に入れているのだろう。

廊下ひとつとっても、ローズの内心を更に荒らす要素になれ果てた。


しばらく廊下を進み、その最奥でようやくローズの旅路は終わった。

執事が最奥の扉を二回ノックし、中からの返事に「ローズ様がお見えになりました」と答える。

中からの返事を受け、執事が扉を開き、頭を下げる。


「失礼いたします」

「ああ」


横によけた執事の向こう――、見覚えのある紳士の顔がある。


どうぞ入って、という言葉に颯爽と入室し、ローズは軽く頭を下げた。