考えている暇もなかったため俺は、まずキスを阻止しようと声を出した。 「あ、先輩」 「…溝田先輩じゃないすか」 鮎川が震えてるのに俺が気付かないと思うか? 鮎川はこんな男なんて好きじゃないんだ。 男から迫られてるんだ。 「鮎川、来い」 「え?」 「来夏?」 男は鮎川を見ている、いや睨んでいる。 「怖がるな。こっちだけ見てろ」 「うっ…先輩っ!」 鮎川は俺の胸にすっぽり収まった。 男は複雑な顔をしている。