~ハル視点~
「ハルちゃん、おはよう」
「…おはようございます」
カーテンを開けると流れ込む眩しい光に
少し目を細める。
私の主治医の宮繁先生がいつものように起
こしに来る。
朝起きて検査してご飯を食べて検査して何
もない日々を過ごして叉夜にはひとりぼっ
ちの孤独な檻の中で眠る。
治らないとわかった日から私の人生は光を
失った。
お昼の検査を終え、中庭へ向かう。
今の季節は春、最近は中庭の桜の木の上で
読書をするのにはまっている。
誰にも見つからず自分だけの世界に入り込
める唯一の場所。
今日もいつものように木に登り、本を開く。
春の暖かな風が私の髪を撫でる。
小さな子供たちの楽しそうな声、小鳥のさ
えずり、柔らかな日差しが睡魔を誘う。
今日も特にやることもないのでそのままゆ
っくりと瞳を閉じた。