それからしばらく3人はゆっくり飲んで会話を続けた。盛り上がってくると、香月はカクテルを注文し、それはそれで美味しそうに飲んでいた。
「それにしても良かった……元気そうで」
「え、うん、まあね。けど私、……この人がいなかったら絶対死んでた」
 香月はとろんとした瞳で巽を見つめた。
「……だろうな」
 巽も良い具合に酔ってきている。
「否定しないんだ(笑) 」
 笑う香月に夕貴は、
「……生きろよ、ちゃんと」
 と、しっかりとした口調で続けた。
「阿佐子が死んだんだ……せめてお前だけでも生きろよ」
「……。そんなこと言わないで、皆で生きようよ」
「……医者はどうでもいいんだ。あいつは死にそうになったら自分で自分にメス入れるような男だよ」
「それもまた、否定できないのよねえ」
「俺も、子供が生まれるんだ」
「えー!!! 何それ、一番最初に言ってよ!!」
「多分男だろうって」
「うそー、じゃあもう結構おなか、大きいの?」
「いや、まだ5ヶ月」
「ひどーい、何でこんな最後に言うの? それ、榊も知ってるの?」
「一回病院で会ったからな、検診の時に偶然」
「あそうなんだ。じゃぁロンドンはしばらく無理だね」
「ああ……、お前も、もう30近いだろ?」
 夕貴は、結婚話でも出てこないかと、その話題を振った。香月はもちろんその問いに答えてくれた。いつもの、明日休み? に対する受け答えのように。完全に決まっていることのように。
「うん、けど私、避妊手術したから、子供産めないの」
 固まった。
「え?」
 とっさに巽を見た。