「……ちなみに、回復手術は?」
「切っちゃったから無理」
 軽く答えた。手術には卵管を結ぶなど、色々な方法があったが、あえて切ることを選択していた。未練を残したくない、それが一番だったといえる。
「子供、いらないもの」
 どこも見ずに答える。
「誰とも知らない子ができるなんて、考えられない。そんなの絶対に嫌。それに、あなたも子供がいらないなら、私もいらない。今は、ほしい?」
 巽はその問いに、間髪入れずに答えた。
「いらない」
「ならそれでいい」
 強く、心に決めて手術をした。あの決断は決して間違ってはいなかった。
 巽もあんなにいらないと言った。今、私がこんなにみじめになったから、手を差し伸べてはくれるが、心中は変わりないはずだ。
「ほしくなったら犬でも飼うわ」
「残りの生涯、自分のことに使えばいい。お前と、俺だけのために」
 思ってもみなかった言葉に、涙が溢れた。
「……ね、私のこと、好きだったの?」
「何だ、今更……」
「いつから好きだったの? 何でそんなにやさしいの? だって、変だよ。今まで私が好きだって言ったって、別にどうもみたいな、そんな、どうでもいいみたいな」
「それはお前の勘違いだ」
「じゃあ、好きだって言って」
 香月は堂々と巽の首に手を回す。
「言わなくても、分かってるだろ?」
「分かってても聞きたい」
 目を見てどんどん近づいていく。
「言わないと、キスする」
「……」
 顔は更に近づいて、タバコのにおいがわかるくらいになる。
「キス、されたい?」
「……どうかな」
もう、触れるくらい近い。