もし、今救いであるのならば、最上が元気で生活しているということだけ。
「四対は何とも言ってなかったが、調べてみよう。会いたいか?」
 言われて初めて考える。
「……馬鹿だと思ったでしょ? 二千万。自力で返すなんて」
 巽はゆっくり、肩をさすった。
「優しいんだよ。お前は。それだけだ。それが悪いとは、俺は思わん」
「……」
 その言葉に、香月は初めて自分で決断したことが、間違いではなかったのだと受け入れられたことに、救われた気がした。
「お前以外にそんなことできるやつがいるとは思えん。好きだった会社までやめて、家も出て……信じられんくらいにな」
 さすっていた手を止め、今度は強く抱きしめてくる。
「……良かったのかな……ってずっと不安だった。毎日仕事が嫌で、……アフターが特に嫌で……、だけど、最上がするよりはずっといい……。皆に……そんなことよくしたねって言われた。だけど……それが間違ってたかどうか、ずっと分からなかった……」
 声が震える。だが、今それを巽にどうしても伝えたかった。
「間違ってないさ……お前には出資してくれる人間がたくさんいる。そういう意味で、その選択は間違ってなかった」
 巽の答えが自分と少しずれていたので笑えた。
「そうかもね」
 目を閉じると頭が痛い。何もかもが一度に起こって、一変に吹き飛んで。心も、体もついていけない。
「携帯か?」
「え」 
 言われてみると、小さな着信音が聞こえてくる。
 巽は無言でベッドから降りると香月のバックの中から携帯を取り出し、勝手に開いた。
「誰?」
 聞いているのに、それには答えず、そのまま携帯を耳にあてた。