「私はその前にあなたが倒れてしまうと思いますよ」
「……私は、死ねないんです。何度も死にたいと思いました。
 色々、ありました……。お店に出ても、会話の仕方も分からないし、お客と寝るように仕向けられるし、水野にはいいようにされるし。
 でも一番は、エレクトロニクスに帰りたかったんです……。
 何もない、綺麗な体で元気に働きたい……。最上とも、一緒に働きたかったのに……」
 顔を隠して泣いた。言葉に出してしまうと、とても簡単なことなのに、そんなことも叶えられない自分に落胆した。
「それに私……手術もしてしまって……」
「……何のです?」
「私、避妊の手術をしたんです」
「え!?」
 風間に子供がいることを思い出した。本気で信じられない、という声である。
「アフターでホテルに入るのをなかなか断れなくて……妊娠しそうで……怖かったんです。それに、彼にも子供は作らないと言われてましたから……。私、あの人の子じゃないと、子供なんていらないし。
 この先、お金を返していく上で、それが武器となって使えるかもしれない、そう思ったのも確かです。いつか、風俗に行かないといけないんじゃないか、とも思ってましたから」
「香月さん……」
 風間が背中を撫でる手に力がこもった。
「彼に助けられて……嬉しいのはもちろんです。だけど、複雑です。こんなに頼るばっかりで、ダメだなあって……」
「ボスは香月さんに出会って変わりました。本当に」
「そうかもしれませんね。だって、最初に会った時は本当に怖かったから」
香月は少し笑顔を取り戻した。
「なんだか、すっとしました。安心して話せる人がいるって……こんなに大切なことだったんですね……」
「私でよければ……、しかし、香月さん……」
「はい?」
 香月はようやく風間を見た。