そういえば、どこから嗅ぎつけたのか、附和が一度、突然来店して指名し、多額の金を落としていった。
 見つかった時は、最悪だと思った。その時は完全に仕事であることを忘れて頭が真っ白になった。
 だが附和は、優しく接してくれた。飲みもしない酒を何本も開け、店中の客に振舞ったのだった。
 「大丈夫?」と心配してくれたり、「金がいるの?」と柔らかく聞いてくれた。
「正直に話します、私にはお金が必要なんです……でも、自分で働いて返すって決めたんです」
「いくら?」
 彼なら驚かないと思った。
「二千万です」
「何に使ったの?」
 やはり、それほど驚いていない。
「株?」
「友人の借金を肩代わりしました」
「友人? 彼氏……じゃないのね?」
「……巽が……ってことですか?」
「いやまさか、君を二千万で売るようなまねはしないだろうけどさ」
「……」
「目処はたってるの?」
「やみくもに……働いてますけど」
「どこから借りてるの?」
「ミサトコーポレーションです」
「じゃ普通のとこか……。俺が二千万用立ててもいいよ。ポケットマネーで十分大丈夫だから」
 やはり、附和は只者ではなかった。
「けど私、どうせ附和さんにお金返さないといけませんから。それなら知らない人から借りてた方がマシです」
「返さなくていいよ、別に」