薄々、気付いていたことを指摘されて、たた口を曲げた。
「お前は1人だからそうやってふらふらする。自分が捨身になっても俺がなんとかして助けてくれるから平気だと思っている、俺の気も知らずに」
「……だって……」
「1人では何も決められないように、してやろうか?」
 突然、巽は少し笑みながら、こちらをじっと見つめた。
 わけが分からない香月は、ただその目を見つめ返す。
「…………」
「お前はまだまだだ。今日のオレがいつもと違う時計をつけていることにも気付いてない」
 言いながら、巽は腕時計を外した。だが、それはいつものロレックスと同じように見え、高級時計に興味のない香月は、
「だって文字盤が黒いと全部同じに見えるんだもん」
ととりあえず言った。
「これは特別だ」
 言いながら、何故か時計を手渡してくる。
「何?」
「シリアルナンバーは、オーダーメイドだ」
 どうせ1111111とかぞろ目にさせたんだろうと、予想しながら裏を見た。
 丸い形の中心にAiという字が見えた。
「…………」
 その後に続くのは、Tatsumi。
「それはお前でもつけられる。長さは後で……」