「その会議のことはもう決まったことじゃないですか。それよりも、佐伯の体調の方が、佐伯の将来のことの方が心配です」
「香月……」
 何故かそこで宮下は、黙った巽を一度見てから、切り出した。
「あのな、佐伯に借金背負わされて助けたのに、またそんな問題持ち込まれて、しかもそれに飛び込んでどうする!? あまり深く関わらない方がいい」
「……それって、佐伯に関わるなってことですか?」
 香月は静かに聞いた。
「そこまでは言わない。だけど、……さっきの、身代わりとか、あんまり捨身になるなってことだ」
 西野へのせめてもの報いを捨身と変換されたことに、カッとしたのと同時に、話の内容を巽に知られたことへのショックでシュンとした。
「とにかく。佐伯のことは、一旦置いて。その、香西店長の話も俺の話は事実だけど、香月の仮想と絡ませられるかどうかは全く分からない。単なる妄想だ。もう深く考えない方がいい」
「…………」
 香月は納得いかないままに、斜め下を向いた。
「じゃあ俺はこれで。
 明日、お願いします」
 宮下の声が巽に向かったのが分かって顔を上げた。
 巽は少し、頭を下げる。
 そのまま、しばらく宮下が見えなくなるまで、2人はその後ろ姿を見送っていた。