「え゛ーーーーーーーーーーーー…………」
「シッ、声がでかい!」
 駐車場中に響き渡るような声に、宮下は慌てて人差し指を立てた。
「それはどういう?」
 宮下を見つめて聞いた。
「この前、何か仕事の電話のついでに、佐伯がどうとか言い出して。で、まあ香西店長の下で働いた時もあったし、まだ連絡取り合ってるのかなくらいにしか思わなかったけど。確か、仕事に復帰したいけど、本社がいいとかそういう内容だったと思う。
 だから、本社は人は足りてるけど、会社に籍があるんなら、店舗ならすぐに戻れるって言ったんだ。で、何で本社がいいのか不思議に思ったから一応聞いたら、これといった返事もなくて。香西店長が言うんならもっと、ちゃんとした理由があって言ってきてもいいのになとは思ったんだ、その時」
「…………つながった…………」
 香月は、額に手を当てて一度宙を仰いでから続けた。
「佐伯、もう店舗の人は嫌だって言ってたんです。あ、結婚するなら、の話ですけど。
 本社の方が給料いいし、そういう人と結婚したいって。
 だから今度、本社の人紹介してあげるね、とか言ってたんですけど」
「まさか、結婚相手を探すために?」
「香西店長が責任とれないから、本社に通してやる、みたいな流になったんじゃないですかね?」
「そんなバカな……」
 宮下にはどうも信じられないようだ。
「香西店長に電話して確認しましょうか?」
「何を?」
 宮下は鋭い視線を向けた。
「そもそもこれは佐伯の問題だ。あんまり首を突っ込まない方がいい。しかも、妊娠とか……プライベートすぎる。仮に、香西店長が関わっていたとしても、他人の香月に話すとは思えない」
「だって今、佐伯、妊娠したけど出血して入院してるんですよ!? 誰にもそのことを言えなくて……」
「言いたくなったら、佐伯が本人に言うだろう。それよりも、明日の会議の方が遥かに大事だ」