「あそうだ……ちょっとすみません、私、佐伯のことで話を聞きに来たんですけど、それがちょっと込み入った話で……」
「何? 」
 言いながら宮下は腕時計を確認した。
「時間大丈夫ですか?」
「ああ」
 即答する。
「あの……」
 ここは会社の駐車場でもあることを思い出して、辺りを見回してから宮下を見た。
「……何?」
 宮下が少し近寄ってくれる。
「あの……実は私がここへ来た理由は、……あの、宮下部長だから話すんですけど」
「ああ、他言はしない。いつものことだろ?」
「あ、そうですね……。あの、実は佐伯が妊娠して、その父親が宮下部長ではないかという意見が出まして……」
 というか、自分の中で出しただけだが。
「は!?」
 呆れた顔にそれに合う声を出した。
「いや、その、佐伯がうちにいることを知らなかった時点で、宮下部長ではないことは分かったんですけど」
「そんな可能性、もともとない」
 宮下は簡単に言い切る。
「そうですよね……」
「何? 父親が分からないということ?」
「いや、もちろん佐伯は分かっているんですけど、教えてくれなくて。それが、私が知ってる人で、結婚できない人っていうんです。だから、家庭がある人で、私と佐伯の共通の人……」
「あ……」
 だが宮下はすぐに
「いや、なんでもない」
 と、言いながら、考え事を始めた。
「え、知ってることがあるんなら、教えて下さい!!」
「いや……、違うかもしれない。けど、今の時点で一番可能性は高い」
 信憑性がかなり高い言い方だ。心当たりがあって良かった、とほっとする。
「誰ですか?」
 言ってくれないかもしれない、そう予感していたのに、
「香西店長」
 宮下は簡単に名前を出した。