「人間としては、後者の方がいいに決まってる。じゃないと私、きっと生きていけなくなるよ」
「お前にとってどういう生き方がいいのか、よく考えた方がいい」
「何?」
「今のままだと同じことの繰り返しだろう。そんな気がしないか?」
 浮気じゃないのに、好きでもない相手に合わせて、好きな巽を不機嫌にさせるという繰り返し。
「別にいいの、それで。私は時々あなたとデートして楽しく毎日が過ぎていけばそれでいい。あなたが仕事をやめろって言ったらやめるし、別れるって言ったら別れるし……」
「嘘つけ」
「え、何も嘘ついてないけど?」
「お前に人を見抜くことなど無理なのか……。前にも一度言ったが、お前の外見は目立つ」
「それね、褒めてんの?」
「今は褒めてない。だから、人より危険度が上がることを忘れるな、疑ってかかるくらいで十分だ」
「人間不信になるよ」
「もう既にそれくらいの経験はしただろう」
「……外見のせい? 全ては」
「……おそらくは」
「整形しようか?」
「しても同じだろう」
「じゃあ外見じゃないじゃん」
「……まあ、人間的なところ、だな」
「珍しく言い直したね(笑)」
 香月は茶化したが、巽はそれには乗らない。
結局そうやって自らの危機感が足らないせいで次々事件に巻き込まれる、そう? いや、全てが全て、そうではない。偶然の重なりなのだ。だって例えばまた、こうやって。
 巽の自宅のテレビをなんとなくつけて、目が釘付けになる。
 深夜のニュース。画面の端に出た、明日が雨だということが問題なのではない。
「昨日未明、中央区に住む新国際ホテル従業員、有田 武 容疑者、28歳を盗撮の現行犯逮捕しました。有田容疑者は勤め先の新国際ホテルのスゥイートルームに侵入し、小型カメラを仕掛けようとしていたところを客に取り押さえられ、逮捕されました。有田容疑者宅には過去に撮影されたと思われる複数の写真やビデオが保管されており、警察は余罪を追及する方針です……」
 え……うそぉ……。
「……お前がこの前泊まったホテルはまさか、スゥイートじゃないだろう?」