「ちょっと待って……、着いてからで……い……」
 運転手がいる。風間が前を向いているが、絶対に雰囲気が伝わってしまっているというのに、さすが社長は気にしない。
 ティシャツを首までたくし上げ、下着をずらそうとするので抵抗しようとすると、両手をシートに押さえつけられた。
「ま……って……」
 声を必死に殺す。
「いゃ……」
 吐息が荒くなるのを、必死でこらえる。
 シートに押さえつけられた腕は抵抗するほど、力を込められて痛くなる。
「ゃ……いやだ……」
 まだマンションまでは10分程度かかる。
 それを見越してだろう、巽は私の背中から左腕を回し、私の両手首をその左手で掴むと、ぐいと身体を寄せた。
 何をしようとしているのか、予想がつく。
「嫌、嫌、嫌、嫌」
 首を振って抵抗したが、聞いてか聞かずか、キスをおとしてくる。
 しかも、柔らかく、ゆっくりと。
 ここで優しくして、言いなりにさせようという魂胆が見え見えだが、それに抗うことができないのも事実だ。
 予想通り、空いた右手が、ジーパンのボタンにかけられる。
 待って、嫌だと、身体を揺すると、大きな左手により、掴まれている両手首を絞められた。
 それに反して、塞がれていた唇が一旦はがされ、今度は丹念に舐めあげられる。
 気を取られている隙に、ジーパンのボタンが外され、更にジッパーを下げられた。
 無意識に、腰が浮く。
 そうされる。そうされるはずだと、頭の中では予測し、身体は構えているのにも関わらず、長い指は下着の布の上をただゆっくりなぞるだけ。