「でぇ……だから、払うつもりで7万円持って来たけどぉ……」
「余計な気を遣うな。お前に金など期待しとらん」
「……まあ……そうだけど」
 香月は平日の連休しかとれない上に、休日は、遊ぶ人がいない、デート代は巽持ちときているので、貯金はわりと貯まっている。
「どっか行きたいなあ……、佐伯にね、ディズニーランド行こうって言いたいけど、高いしねえ……。いつも、公園で済ましてる」
「ディズニーランドも公園に近い」
「え、まあね……ディズニーランドも公園に近い、かあ……」
 香月はふふふと笑う。
「名言だね!!」
 親指を立てて見せたが、
「何が名言だ……」
 巽は呆れて見せたが、ちゃんと笑ってくれている。
「佐伯がさぁ……、千さんと付き合って、金銭感覚がずれたって言ってた。だから、そういえば、船場吉兆に普通に出入りするようになった私も、そうかなあって言ったら、「四対さんに、スーパーのりんごの皮出してるようだったら大丈夫」って言われた」
「りんごの皮?」
「あれ、言ってなかったっけ?? この前アップルパイ作った時に、そのりんごの皮で紅茶作ったんだけどね、まずいって言われちゃったんだよねー。一応味見したんだけどね、私普段紅茶飲まないからさあ、わかんなくって」
「四対のためにアップルパイを作る余力はあるのに、サンドイッチを作る暇はないのか?」
「あ」
 言われて初めて思い出した。あ、そうだ、私、巽にサンドイッチ作るとか言った!!
「え、あー……。
 来週作るよ!!」
 ちゃんと指切りしよう。そう思って、前のめりになり、広いテーブルの上に小指を立てて差し出して、前に出した。