何の根拠もない断言に、
「何でそう思う?」
 顔を覗き込んで聞いてやった。
「今まであいつを取り囲んできた、他のとは違う」
「……まあ、貧乏人ばっかだったろうなあ…」
 四対は顔を離し、もう一度宙を仰いだ。
「回復するかどうか、手術するかどうか悩んでんじゃねーのかよ?」
「……どうだか……」
 巽は長く煙を吐き出す。
「そうにしか見えなかったけど?
 ……今……えーと、えーと、名前忘れたけど、千の前の女と住んでるだろ? 子供と。だから……」
「そうかもな……」
 奴の顔を盗み見た。もちろんこちらではなくまっすぐ前を向き、入口を睨んでいる。
「……年とる前に作ったら??」
「………」
 巽はタバコを口にくわえたままくるりと向き直り、外の夜景を見つめた。
「女は子供産めば変わるよ……、姉貴も変わった」
「……」
「子供産んで、年とって、どんどん不細工になれば、違うだろ。今のままじゃキレーすぎるんだよ……」
「単純な発想だな」
「何も考えてねーテメーよりはマシだろ!」
 四対はそのまま前へ進む。あー、こういう奴と話してると、最後にムカムカするのは結局自分なのだ。
「あそうだ。今回、西村議員が出馬するから」
 その詳細も言ってやろうかどうか少し迷ってやめた。そう、自分ばっかりお子様扱いも癪に障る。