「私、避妊手術してるの」
 四対は表情を変えずに聞いた。
「何で?」
「……クラブで働いてた時、アフターとか、色々怖くて……」
「それってもう一生子供産めねーの?」
「そんなことない、回復手術っていうのがある。けど、妊娠する確率は低いって」
「……、で? それがどうかした?」
 四対は、何事もなかったかのように、湯呑に手を伸ばした。
「……ううん……」
 そう、四対には、何も関係がない。
 ただ、言いたかっただけのこと。
「………自分で考え抜いて、手術したんだろ?」
「……うん」
 四対の目をちゃんと見たかったが、既に周りはぼやけていて。
「……ならいいじゃねえか……。回復手術するのもあり、そのままでいるのも、あり」
「……うん……」
 そう……、四対の言う通り。私は一体、何を期待して、彼に打ち明けたのだろう。
 瞼が重くなり、視線をずっと下に落とした。手にぽたり、と雫が落ちる。
「……奴は知ってるんだろ?」
「私……本当はずっと手術するかどうか迷ってた。
 あの人と、ずっと結婚したかった。
 けど、ダメだってずっと言われてた。
 なら、子供だけ欲しいって言ったらダメだって言われて……、悩んで……悩むのが嫌で……、それならいっそ、手術すれば、気が楽になるんじゃないか……、いや、そんな私をかわいそうと思って、ずっと一緒にいてくれるんじゃないか……そんなことばっかり、長い間考えてた」
「……病気だぞ、それ」
 四対は暗い声で言った。