「……子供を1人抱えて……大変だよ、絶対」
「お前が支えでいいじゃん。別に男じゃなくても」
「……まあ……」
 そうだけど……。
「あーあ……オーストラリアも行きそびれたな」
 四対は座椅子の上で足を投げ出し、伸びをしながら遠くを見つめた。
「いいじゃん、4人で行けば」
「はあ!? どの4人!?」
「私と、四対さんと、佐伯と、娘」
「なんで俺が。それは他でやりゃあいいじゃん」
「……まあ……そうだね……お金もないし……」
「2人ではオーストラリアには行けねえ、しな……」
 四対は、片手でお椀を掴み、吸い物をすすりながら言う。
「……そんなことないんじゃない? ……聞いてみたら、何も言わないかも」
「……聞いてみたらって?」
 四対のその微妙な表情からは、何を言わんとしているのか、既に見てとれた。
「一応……あの人に了解してもらってから……かな……」
「男と2人で旅行に行くんだけどって!? そんなのいいってゆーはずねーだろ!!」
「けどさ、四対さんは大丈夫だってすっごい信用してたよ!?」
「……なんでだよ……キモイ……」
 四対は眉間に皺を寄せて、顔を背けた。
「けど、あの人に聞いたら、四対さんは大丈夫だって言ってくれた。だから私は、四対さんのこと、信じてる。この人は大丈夫な人なんだって」
「大丈夫な人って……なんだよ……」
 褒めているのにも関わらず、あからさまに不機嫌になった。
「……私さあ……」
 香月は、箸置きに箸を戻した。
「……」
 四対を見つめた。
 四対もちゃんと、こちらを見てくれている。