「………」
 佐伯はまた、娘を見つめた。
「……その時は言います」
「うん……、こんな立派なマンションには住めないかもしれないけど、店舗の平社員よりは、いいと思う」
「そうですね……」
 そのまましばらく沈黙が続いた。
「そういえば西野さん、どうしてる? 最近全然知らないけど」
 香月は思い出したので、そのまま聞いた。
「ああ……、普通にしてますよ。時々遊びます。……もう、先輩が遠くの人にしか思えないって言ってました」
「何が(笑)」
「私たち、こんな普通に高級マンションとかにいたりするけど、西野さんとか、普通の人からしたら、到底自分の手では買えない物だから……、色々思うんじゃないですかね……」
「まあ……、私たち、金銭感覚少しずれたかもね……」
「大丈夫!! リンゴの皮を四対さんに出してるくらいなら大丈夫ですよ!!」
 佐伯はばっちりウインクを決めてくる。
「リンゴの皮を使ったってだけで、皮を出したとは言ってないよ!!」
「けどそれ、最高に面白いですね!!
 彼氏にもそんな感じなんですか??」
「え、彼氏? 別に……」