「へー……意外だなあ」
「まあ、聞いてみないと分かりませんけど」
 そこで丁度30分経ち、テレビが自動で消えた。
「30分タイマーなんです。はい、休憩」
「……幼稚園、だっけ?」
 香月は、塗り絵を始めた娘を見つめて聞いた。
「働き口、探さないとなあ……」
「……お金、あるんでしょ?」
「あるけど……。なんというか……」
 佐伯は珍しくそこで言葉を区切った。
「子供おろしたんです、実は」
 間髪入れずに言った。
「四対さんから少し聞いた」
「……もう結婚はないでしょうね」
 佐伯は子供を見た。娘は、ジュースを元気よく飲んでいる。
「……まだ若いじゃん」
「…今の生活が終わったら、また普通の人と再婚して……またあのループの食事してって……そんな生活、もう嫌なんですよ」
「……、このままでいるの?」
「私を家には絶対入れられないって、彼の両親から言われました」
「……」
「けど、ここにいれば彼が来てくれるし……それだけが支えです、今は」
「……、佐伯……、……」
 佐伯は涙を拭い拭いはしたが、ただ溢れてばかりだった。
「……四対さんに、誰かいい人紹介してもらおうかなっ……」
「そんなお金持ちじゃなくても……本社レベルくらいの人ならいいじゃん……成瀬さんとかどう!?」
「どんな人か知らない……」
「いい人だよ? もし、本当に誰か紹介してほしいなら、本社のいい人、必ずいい人紹介する!」