胸元で、ダイヤのネックレスが揺れた。ハート型が、佐伯らしい。
「今井さんの家で飲み会があったの。そしたら、そこに、……佐伯くらいの女の子がいてね、あ、多岐川さんって知らないかなあ」
「知ってますよ」
「えー!! その人その人、もう最悪だよー」
「えー、でもそんな悪い印象ないけど。一回なんか、応援? じゃないなあ、なんか用で店に来てて、一緒に昼ごはん食べたんですよ。けど別に、普通だったかなあ……」
 佐伯は宙を見て、何か確認した。
「違うのよ……それがさあ、私、この前四対さんと一緒に伊吹行ったのよね。和菓子屋。で、そこを、えーと、伊吹さんに見られて、伊吹さんって分かる?」
「知ってますよ。私もあそこよく行くから」
 はー、まあ、そういう生活してますよね。
「あ、そう……。で、その飲み会に伊吹さんも来てて、私が四対さんと友達ってことがみんなにバレて、で、多岐川さんが紹介してって言い出してさあ……」
「(笑)、絶対ダメでしょ」
「でもさあ、私は、多岐川さんと完全初対面でさ、紹介してとか言われても、絶対無理じゃん、四対さん、出て来ないと思うでしょ!?」
「うん、絶対来ない」
「で、だから、でも、偶然知り合うとかならいいと思ったの!!」
「あー、まあ、結構失敗しますけどね」
 佐伯はじっとこちらを見つめた。
「……そう?」
「そう」
 まだ見つめている。
「何?」
「忘れたんですか?」
「何が」