「持って行こうか? そこまで」
 その場合、多岐川をどうしよう……。
『いや、ちょっと出た方がいい』
「じゃあ、公園で待ち合わせにしようか?」
 四対が公園などに来るのかどうか知らないが、まあ、こっちは一般人だと、胸を張って言ってみる。
『いーよ』
 あ、そうなんだ。
「じゃあ、2時くらいにとりあえず待ってるから。けど時間なかったらもういいからね。気にしないで。私も明日休みだからちょっと思いついただけだから」
『おう……行くよ。心配しなくても』
「あ、そう……」
『じゃあな』
「……じゃあ……」 
 って、家帰って寝たいのを我慢して、アップルパイの作り方を確認して、寝たのだ。そして、今日もわりと早起きして、作ったのである。
 味見は少ししたけど、まあまあ。
 とにかく、手作りなんだから、不味くてもいいのだ!!
 もちろん、多岐川には、中央公園でと連絡している。はああ……うまくいくのかね、本当に……。
 公園でさらっと会ってみて、その後、帰りがけにでも「これ……例の物……」みたいな感じで渡せれば……いいかなとは思っているが。
 現在の時刻は2時10分を既に指していた。もしかしたら、来ないかもな……忙しいし。
「……」
 遠くで、誰かが走る音が聞こえて振り返る。
「……ごめん……」
 香月は小さく呟いた。四対はスーツのまま、慌てて走って来てくれていた。
「わりぃ、遅れた」