手にした附和薫の名刺が、少し震えた。
 これで、何をどうすればいいのか……。
 附和は突然何故機嫌を悪くしたのか、香月には全く不明であった。
 しかも、覚悟って……何??
 そういわれると、かける気がしない。……それを狙ってあんなことを言ったのだろうか。
 香月は、考えながら、エレベーターに乗り込む。
 これからどうしよう……。
 なんだろう、附和が言いたかったことは何だったんだろう……。
 エレベーターはすぐに止まった。一階から人が乗ってくるようである。
 扉が開くと、驚くことに、見たことがある顔が現れた。
「……あ……」
 思わず声に出してしまったのは、お互い。
「……こんばんは」
 仕方なく、挨拶をする。
「こんばんは……。附和専務と仲いいんですか?」
 フリーカメラマン、高羽は、こちらを見つめて、いきなり本題から入ってきた。この男とは、以前、榊との熱愛を週刊誌に載せられて、出版社でケンカ別れしたままである。
「……」
 香月は、それには答えず、ただ前を向いた。