「俺のことを嫌いで仕方ない君が、僕に手厚くコーヒーなどを振舞ってくれちゃう日」
「嫌いだとは一言も言ってませんけど」
「あそっか」
 附和はおかしそうに笑って、コーヒーにミルクだけ入れた。
「で……あの、私が今附和さんに会いたいって言った意味、分かりますか?」
「何? ……、僕のことを好きになっちゃったわけ?」
 ミルクをスプーンで混ぜながら、上目使いで聞いてきた。
「違いますよ! その話題から一旦離れて下さい」
「って言われも……、何? 全然わかんないけど。巽の差し金じゃないだろうしなあ」
「うん、私もおかしいとは思ったんですよ。けど、誘わずにはいられなかったんです」
「何その前フリ」
 附和は目元をゆるめて、コーヒーを一口だけ飲んだ。
「あれ……意外に美味しい」
「失礼な!! (笑) 意外って何ですか」
「僕ね、家のコーヒー以外はミルクを入れてから飲むの。あんまり好みの味じゃないに決まってるから。けど、これは美味しいね」
「そうなんですか? 私、コーヒー飲まないから知りませんけど」
「いや、君が入れたからに違いない」
 一時沈黙。