「……そうなんですか……」
 今井の小言と、村瀬の怒る姿を思い浮かべて少し笑った。
『相談を俺に持ってくるのも、香月の役目。今回は、それを解決するのは、真藤さんの役目だ。な?』
 そう、確かに宮下のことは、信頼して尊敬しているが、もう以前のように、迷惑をかけまいという、維持の気持ちは随分なくなった。
「はい」
 にこやかに笑顔で電話を切った。気分が最高に清清しかった。
 そのおかげだろう。リビングで一人寛いでいると、最高に眠くなってきたのは。
 いや、このまま、少し目を閉じてしまおう……。
 インターフォンの音で目が覚めた。随分寝てしまっていたので、もう深夜かもしれない。そう慌てて時計を見たが、実際は15分ほど経った、午後9時45分であった。
 すぐにドアホンで確認する。
「中に入って下さい」
 附和は何故か少し驚いたようで、ドアを開けた瞬間から冗談を飛ばしてきた。
「今日はもしかして、襲われちゃうのかな」
「違いますよ、そんなわけない」
 香月は厳しく否定すると、ビシッと完全に仕事ができる男スタイルに成功している附和を、高級ソファで出迎えて、用意してあったコーヒーと麦茶をテーブルの上に乗せた。
「いやー、まさかこんな日が来ようとは……」
「どんな日ですか?」
 手持ち無沙汰に、麦茶を一口。