地に足がつかない。
 まるで、浮いているよう。
 心どころか、体さえも。
「香月、大丈夫か? 顔色が悪い」
 数人のミーティング中でも、宮下は、堂々と聞いてくれる。
「え……あっ、いえ……」
「風気味なら、薬飲んだ方がいいぞ」
「……はい」
 一同、そうなんだ、という目を向ける。
 副社長が宮下に言っていた「上司として頼れる」のは、こういうことだったのだろうか? ……それは、少し違う気がした。
 頭の中では、朝からずっと同じことが回っている。
 附和に、会わなければいけない。
 絶対に。
 絶対に今日中に会わなければいけない。
 会社名はようやくさっきウィキペディアで調べた。附和グループ株式会社、総合商社で従業員数は2万を超える大きな会社だったようだ。中央ビルのすぐ近くに本社がある。こんな近くにいたことに、かなり驚いた。
 電話じゃきっと、埒が明かない。
 だから、会いに行く。
 とりあえず、受付に言ってみてダメなら、ロビーででも待っていよう。そうすれば、いつかは会える。
「……」
「……香月さん?」
「うわっ!!」