「ああ(笑)、ごめんごめん。ところでさ、巽の携帯知らない? 番号変わってるみたいなんだけどなあ」
「ですよね!! 私も繋がらないんです!!」
「何で愛ちゃんが繋がらないの? あ、もしかして、それが原因?」
「それがって……それがって何ですか……」
「だからつまり、けんかして番号変えて、教えてもらってないとか」
「……そんなんじゃ、ないと思うんですけど、なんか分からないけど、確かに突然携帯が繋がらないんです」
「ま、僕も同じっちゃ同じなんだけどね」
「……番号、教えてもらわないんですか?」
「いやー、まあ、基本的に用事ないから(笑)」
「そうなんですか……」
「でも愛ちゃんは用事あんでしょ? 電話かけてるくらいなんだから」
「まあ……」
「けど、変えたら変えたで新しい電話番号連絡してくればいいのにね」
「ですよね……」
「まあいっか、そのうちどっかで会うだろうし」
「……例えば、どこでよく会います?」
「うーん、その辺のコンビニで会ったことはないけど……この前は政治家主催のパーティで会ったかな。うんそうだな、何かのパーティでよく会う。人脈作りがうまいしね、彼は」
「そうなんですか……」
 香月には到底無縁の場所である。
「え、聞いてあげようか?」
「……ほんとですか?」
 思いもかけない嬉しい話しだが、とりあえず疑ってかかることにする。
「嫌ならいいけど」
「いやー。でも、それで電話かけても……」
「何、ほんとにケンカしたの?」
 附和は元気よく笑った。
「うーん、まあ……」
「へえ……」
 明らかに附和の顔つきが変わった。