時々、考える。
巽と自分はこれからどこへ向かうのだろう。
ゴール、なんてない。
ならば、いつかは、離れてしまうのだろうか。
溜め息はいくつついても、足りない。
仕事が満足にいき始めると、次の悩みが待っている。人生とは、そんなものなのだろうか。
「ごめんね、……反省してる」
「え……何をですか?」
初めて、今井に2人きりの飲みに誘われたのは、仕事にやる気を出した、2週間後のことだった。仕事帰りにダイニングバーなど、もう随分行っていない。
テーブルを真ん中に今井は軽い酒を飲み始め、今日は泥酔しない方向で話をするんだな、とほっとした。
「なんか……香月さん、仕事好きじゃないのかなあって……」
その言葉で、阻害されていたことを確信した。が、もう過去の話だ。
「いえ……」
悪いのは、周りではない。仕事を疎遠した、自分にある。
「けど、牧先生とのこと聞いて、大変だったんだね」
「え、何ですか?」
「牧先生に誘われて大変だったんでしょ?」
宮下はどうやらそういうことにしたようだったが、うん、とも、すんとも言いがたい。
「いえ、誘われて大変、というか……。そもそも、牧先生とは知り合いだったんですよ」
「けど、迷ってたんでしょ? 分からないでもないけどね……」
確か、今井は好みのタイプだとか言ってたな……。
「すみません……。わざと、じゃなかったんですけど、どういえばいいのか、なんというか、私、そもそも店舗に戻りたいので……、ストライキともいいますか……」
「あ、そーだったんだあ。そっちかあ。じゃあ全然違うじゃん。なんか皆色々言うからさ。牧先生に誘われて、というか、気に入られてるから、天狗になってるっていう……感じで」
「え、天狗って……そんな偉い人じゃないでしょ? いや、知らないけど……」
「そんなことないよ、有名な建築家だからね……」
今井は、自分で納得をしながら、グラスに口をつけた。
「店舗……戻れないかどうか、聞いてみたら?」
巽と自分はこれからどこへ向かうのだろう。
ゴール、なんてない。
ならば、いつかは、離れてしまうのだろうか。
溜め息はいくつついても、足りない。
仕事が満足にいき始めると、次の悩みが待っている。人生とは、そんなものなのだろうか。
「ごめんね、……反省してる」
「え……何をですか?」
初めて、今井に2人きりの飲みに誘われたのは、仕事にやる気を出した、2週間後のことだった。仕事帰りにダイニングバーなど、もう随分行っていない。
テーブルを真ん中に今井は軽い酒を飲み始め、今日は泥酔しない方向で話をするんだな、とほっとした。
「なんか……香月さん、仕事好きじゃないのかなあって……」
その言葉で、阻害されていたことを確信した。が、もう過去の話だ。
「いえ……」
悪いのは、周りではない。仕事を疎遠した、自分にある。
「けど、牧先生とのこと聞いて、大変だったんだね」
「え、何ですか?」
「牧先生に誘われて大変だったんでしょ?」
宮下はどうやらそういうことにしたようだったが、うん、とも、すんとも言いがたい。
「いえ、誘われて大変、というか……。そもそも、牧先生とは知り合いだったんですよ」
「けど、迷ってたんでしょ? 分からないでもないけどね……」
確か、今井は好みのタイプだとか言ってたな……。
「すみません……。わざと、じゃなかったんですけど、どういえばいいのか、なんというか、私、そもそも店舗に戻りたいので……、ストライキともいいますか……」
「あ、そーだったんだあ。そっちかあ。じゃあ全然違うじゃん。なんか皆色々言うからさ。牧先生に誘われて、というか、気に入られてるから、天狗になってるっていう……感じで」
「え、天狗って……そんな偉い人じゃないでしょ? いや、知らないけど……」
「そんなことないよ、有名な建築家だからね……」
今井は、自分で納得をしながら、グラスに口をつけた。
「店舗……戻れないかどうか、聞いてみたら?」