香月は、また、仕事もできないくせに、と言われるのが怖くて、声を落として言った。
「僕はあなたのことが、好きで……、心配だから言ってるんです」
「私、もう行きますから」
「待って下さい!!」
 涼屋は香月の腕を掴んだ。
 だが、すぐに、手を放した。
「……」
 香月は、風間を見上げた。だがすぐに目が潤んで視線を落としてしまう。
「お引取りください」
 風間は、香月の肩を寄せ、そのままエントランスへと方向転換した。
 だが、涼屋もすかさず香月の前へ走り出た。
「僕は……!!」
「好きだからって何でも許されるわけではない。嫌がってるのが分からないのか?」
 風間は厳しく言った。
「私はもう、絶対仕事なんかに行かない。そんな風にみんなにバカにされてまで、仕事がしたいんじゃない……」
 香月は涙声でそう言うと、すぐに一歩を出した。
「これ以上付きまとうなら、警察呼びますよ」
 風間はそう吐き捨てた。
 その言葉は、涼屋に届いたのだろう。彼はそこから一歩も動かず、香月達の後を追うことはなかった。