まさか、会社にバラす気なのか!?
「なんですか? 何が言いたいんですか?」
「どうしました?」
 会話に集中していたせいで、風間の車が停車したこと、ロビーの中にまで入ってきてくれていたことに全く気づかなかった。
 だが、ここで会話をやめるわけにはいかない。
 香月は、風間の側に立って続けた。
「会社の人に言いたいのなら、言えばいいんです。私は別に、それで会社を辞めることになったって、構いません」
「彼氏、ですか?」
 涼屋は風間に聞いたが、風間は何も答えない。
「……お知り合いですか?」
 風間は香月に聞く。
「……会社の人です。私が、警察沙汰になっているような人と付き合っているならやめた方がいいって。警察が……来たことが会社の人にばれたら困るだろうって」
「僕は香月さんのために言ってるんです」
 領野は風間の目を見て言った。
「この前……警察が来たんです。私とこの人が食事してるところに。で、その後警察は、この人にわざわざ会って、話したそうです」
「社長の店が先日、空き巣に遭いました。大方、その捜査でしょう」
 風間は涼屋に言ってみせる。
「そういう……、そういう風な事件の捜査には見えませんでしたけど」
 領野は一気に疑いの目で睨んだ。
「それはあなたが勝手に思ってることじゃないですか!」
 香月は声を荒げた。
「……」
 香月を制するように、風間が腕を伸ばしてくれる。大きく、鼻で息を吸ってから、続けた。
「いいんです。私は別に会社を辞めたって。そんな風にしがみついてるわけじゃ、ありませんから」
 吐き捨てるように言ったが、相手はそれでも引かなかった。
「みんな不思議がってます。あなたがどうして企画部にいるのか」
「なんなんですか?」