「……それは、答えられないな……。朝比奈君は少し事情を知っていたから、他言しないのを条件に話したけど」
「お願いします。あの、僕、最近香月さんと仲良くなって……」
 だからなんだという顔をされた気がして、素直に喋ることにした。
「あの、本当言うと、前からすごく好きだったんです。彼女を追いかけて、本社の試験を受けたくらいに。2度、落ちましたけど」
「……まあ、そういう人もいるんじゃない?」
 宮下は少し笑った。それは、元彼という立場からくる余裕だろうか。
 いや、それを信じて今発言したのだ。
「あの……。宮下部長が、以前香月さんとお付き合いしていた、という話を信じて言います。
 香月さん、最近警察に付きまとわれています。
 それで……、彼女を助けてあげたくて……もし、宮下部長が何かご存知なのでしたら、……と思ったんですけど」
 宮下は目をそらして、真剣に考えている。
 えらく、長い時間が経過した。
「……彼女が助けてほしいって、言った?」
「……いえ」
「なら大丈夫なんだろう。彼女には友達もたくさんいるし、助けてくれる、適切な人もいると思うけど」
「今の彼氏のことですか? その、今の彼氏が警察に追われているような人なんです! だから……、あの、実は、香月さんには口止めされましたが、僕と永井君のところにも、警察が来ました。香月さんと親しくしている男性がいないかって。会社、エレクトロニクス以外で親しくしている人が」
「口止めされたんだろ!? なら黙っているべきだ」
 宮下は突然厳しく非難した。
「けど、彼女、困っています! 僕とか、永井はそんなに親しい付き合いじゃない。それに、多分警察が僕たちを見たのも偶然だと思います。だけど……、彼女、困っている風でした」
「……彼氏が警察に追われて困っている? そう言ったわけじゃないんだろ?」
「そうですけど。僕は力になってあげたいんです」
「それを決めるのは香月だ」