紺野の表情は変わらない。
「当たり前です!!」
「巽光路と付き合う、というのはこういうことなんです。非常に危険な男です」
「私から巽を引き剥がして、一体あなたにどんな得があるんですか?」
 怒っているわりには、まともなことが言えた、香月は自分自身が意外にも冷静であることを知った。
「得がなくても動くのが警察です。あなたのためを思って言っています」
「……あ、そうだ!! 紺野さん、そういえば、刺されたんじゃなかったんですか!!?」
 心配して言ったのに、言った途端後悔した。そういえば、それは巽から出た情報である。
「……いえ、実際には、切られただけです。かすり傷に近い」
 相手はこちらを見据えるように言った。
「……」
「よく、知っていましたね」
「……そうですね、心配、していましたから。私はきっと、正直すぎるんでしょうね。あなたが編集者だって記憶がまだ消えない」
 そこで、ふいと顔を背けてみせた。
「それは……大変申し訳ないことをしたと思っています。反省しています」
「そこまでして、巽を逮捕したいんですか? 彼は一体どんな罪を?」
 銃刀法違反……だろうか……。
「麻薬取締法違反です。彼は日本の麻薬輸入ルートを取り仕切っています。
 香月さん、もし、今すぐ尿検査をしてほしいと言われたら、できますか?」
「え?」