警察に行く前に連絡をしなければならない。だが、携帯電話も使わせてくれない今、何をどのようにすれば良いか全く分からず、放心状態でいた。
 ふと、顔を上げる。その薄暗い地下駐車場に、見慣れた顔が、一つ。
「夕ちゃん!!!」
 叫びながら、中から窓を叩いた。
 車に乗り込もうとしていた夕貴はすぐパトカーの中に気付き、じつとこちらを見ている。
 出社前らしいその恰好からして、助手席のドアがすぐ閉まったのは、同伴の途中かもしれないとすぐに察したが、続けて窓を叩いた。
 だが、二度目に叩いた音は聞こえなかったかもしれない。
 何故なら、もう既に車は地下から出てしまっていたから……。