給湯室から、窓の外を見ることにだんだん慣れてくる。
 特に今日は、今井からのランチを断ったせい。
 紺野に、巽のことを散々つつかれ、裏切られていたことに相当なダメージを受け、昨日我慢ができなくなってすぐに今井に電話をしてしまった。
「今井さん、騙してたんですね」
 今井は、『えっ?』と言ったっきり。
「紺野さん、警察だったんですね。最低です。事件のことで私に近づいたって。今そう言いました」
『え……事件!? ……、何の?』
「そんなの知りません! 知らなかったんですか?」
『いいえあの、奏ちゃんが刑事だってことは知ってたけど、香月さんに仕事のこと目当てで近づいたなんて、それは全く……、え、本人がそう言ったの?』
「そうです。信じられない。最悪です。私は少なくとも友達だと思っていました。今日もバーベキューの話、したばかりじゃないですか!どうして何も言ってくれなかったんですか!?」
『その……ごめんなさい。本当に私も、そんな方法よくはないと思ってたの。けどその、もし香月さんと奏ちゃんがうまくいったら……追々説明するつもりなんだと思ってて……』
「うまくって。私、彼氏がいるって……紺野さんにも説明してます」
『うん、そうなんだけどね。諦め切れなかったみたいだったから……』
「そうじゃなくて、事件のことでただ調査したかっただけみたいです」
『ええー……!! ……ご、めんなさい……。その、気を、悪くしないで……』
「そんなわけないじゃないですか! 今だって突然ですよ! マンションで待ち伏せしてて。誘拐事件に協力してほしいって今正体明かしたんです。信じられない。人の気持ちなんて、どうでもいいみたい」
『いや、そういうわけじゃないのよ!? ……そんな子じゃないのよ』
「……」
『……』
「……最低です」
 声が震えてしまった。ずっと隠していたのに。
『……奏ちゃんに話聞くわ』
「私はもう会いません。彼も、もう会わないって言いました」
『……』
「すみません、……今井さんにはあんまり関係なかった」