10時10分前にロビーで待っていた香月は、エントランスに赤のオープンカーが停車したのを見て、同時にため息をついた。ど派手な車の中には、サングラスをかけた若い男が一人乗っている。
「おはよう」
 言いながら乗り込む。
「高一郎たちは先行ってるって」
「あそう……。運転できるんだね」
「当然だろ」
 四対は意外に落ち着いたハンドル捌きで、車道へと出ていく。
「……いくつなの?」
「何が?」
「年……。20歳は過ぎてるよね?」
「俺? 22」
「え゛……学生?」
「今年卒業」
「あそう……」
 今の6歳差は非常に大きい。いきなりどっと疲れを感じた。
「えっと、千さんも?」
「一緒」
「千さんも大学行ってるの?」
「ああ。けどあいつはアメリカの学校行きなおすって。勉強好きなんだよ」
「へえー」
 まあ、嫌いそうにもあまり見えない。
 かくして、平日のためそれほど渋滞していなかったせいか、伊豆までの3時間のドライブはわりと疲れたものの、たいくつはしなかった。お金持ちの概念とは裏腹に、お金を使わない時間帯でも面白い人なのかもしれない。
「ここ?」
「そ」
 意外にも洋風な邸宅は、お城並みの大きさと風格で、門扉ももちろん車何台分も通れるほど広く、インターフォンを探すのにも時間がかかりそうであった。
 とりあえず端に寄って、インターフォンを探そうとしたが、四対はそのまま堂々と真ん中に位置している。
「え……」
 あそう。門は自動で開くのか……。
「早く来いよ」
 そうですよね……。