出世欲のある朝比奈がそこで指揮を執りたいのは分かっていたが、これはあくまで補助的な役割なので、香月ぐらいのレベルで調度いいのだ。
「フリーでいた時を思い出すよ。香月は間の取り方と、頭の回転と、それプラス、不思議なひらめきが抜群だった」
「へえ……」
そう、朝比奈に聞かせているのだ。
「なんかそれ、褒められてるんですか?」
「そうだよ」
だがそれが裏目に出たのか、
「私はフリーに戻りたいです」
「……」
「……」
男2人は完全に間を置いた。
「まあ、今ある仕事をどんどん片付けること、その後にしよう。その話は」
「……」
香月は目を伏せたまま、何も言わない。
「宮下課長、ちょっといいですかー!?」
遠くのディスプレイの前で誰かが呼んだ。
「はーい!! ……、気にしなくても、普通にしてれば大丈夫だから」
それだけは言っておかなくては、と、とりあえず耳に入れておく。
だが、それが香月の心に聞こえたかどうかは分からない。
朝比奈が香月に何か声をかけるかなと思ったが、香月はすぐに立ち上がった。
話を聞いてやらなければ……、そう思っていたのに、新店舗オープン日はどんどん近づき、香月が他の従業員に紛れて分からなくなっていく……。
「フリーでいた時を思い出すよ。香月は間の取り方と、頭の回転と、それプラス、不思議なひらめきが抜群だった」
「へえ……」
そう、朝比奈に聞かせているのだ。
「なんかそれ、褒められてるんですか?」
「そうだよ」
だがそれが裏目に出たのか、
「私はフリーに戻りたいです」
「……」
「……」
男2人は完全に間を置いた。
「まあ、今ある仕事をどんどん片付けること、その後にしよう。その話は」
「……」
香月は目を伏せたまま、何も言わない。
「宮下課長、ちょっといいですかー!?」
遠くのディスプレイの前で誰かが呼んだ。
「はーい!! ……、気にしなくても、普通にしてれば大丈夫だから」
それだけは言っておかなくては、と、とりあえず耳に入れておく。
だが、それが香月の心に聞こえたかどうかは分からない。
朝比奈が香月に何か声をかけるかなと思ったが、香月はすぐに立ち上がった。
話を聞いてやらなければ……、そう思っていたのに、新店舗オープン日はどんどん近づき、香月が他の従業員に紛れて分からなくなっていく……。