「愛ちゃん、あのだってね……、誰か一人は会議に参加しないとダメなんだよ?」
「分かってます。けどだからって何で私だけなんですか? そんなら村瀬部長も一緒に来てくれたらいいじゃないですか」
「いやだからね……それがその、なんというか……」
「嫌です。そんなの誰だって嫌に決まってます」
「いや、まあ……。気持ちは分かるんだけどね」
「絶対嫌です。一人じゃ行きません。というか、他に一人でも行ってくれる人いるんじゃないですか??」
「いやまあそれがね……僕は、君を推薦したい! というか……」
「私そこまでして這い上がりたいとかないんです」
「いや、決してこれが出世に関わっているとか、そういうことじゃないんだよ?」
「嫌です。そこまで言うなら、一緒に行ってください。食事の用意がないんなら、私、食べませんから」
「……じゃあ、僕も一緒に行こう。これならいいね?」
「……途中で仕事が入ったとかナシですよ」
「と、当然だよ、当然だ!!」
「……この話し、私以外に聞いた人、いないんですか?」
「誰も知らない」
「……嫌だなあ……あ」
 いや、聞くつもりなんて、さらさらなかったんですけど。
「あ、あ、あ、朝比奈君!! いや、そのこれは……大事な会議の出欠の話しでね!」
「そんなおどおどしてたらなんか怪しいじゃないですか!! こんな狭いところで話しするからですよ!!」
 香月は随分いらだっているようだった。こんな姿を見るのは初めてである。まあ、こんな社内の隅にある自販機と壁の間でこそこそ話しているくらいだから、よほど人に聞かれたくなかったんだろうが……。
「いや、悪い。じゃあ僕はいくから。また後で、連絡する」
 村瀬部長はいつも得意の冷や汗は出ていなかったので、だた喋り方があぁなのか、とむしろ納得がいった。