「……よかったよ。電話をくれて。あれから、色々考えて、……とにかく、連絡くれてよかった」
「……すみません」
何に対する謝罪なのか、今はまだよく分からなかったが、その言葉が一番適当な気がした。
「とにかく、会って話をしよう。会えるか?」
「えっ、今!?」
 思わぬ提案に、動揺するばかりで。
「今会社に来ててな。ロビーに降りたところだ。休みなのにデータを忘れて……」
「…………」
「今どこ?」
「東京マンションです」
「自宅か。行こうか? 近くまで」
 宮下が、こんなにも懐かしく優しいあの宮下が、今近くまで来ようとしている。
「ち、ちょっと待って下さい。ちょっと待って」
 目を閉じて真剣に考える。
「調子悪いか?」
 いくらなんでも、体調のことまでは知るはずがない。
「いえ……、その、なんというか、何を言えばいいかも……」
「何を言うかなんて、思っていることをそのまま言えばいいんだよ。思っていないことなんか言えないくせに」
 笑う宮下のおかげで、心がかなり軽くなる。
 2人はマンションの近くのカフェで午後3時に待ち合わせをすることにした。中央ビルからは一時間近くかかるのでちょうどよい時間といえる。