桜美院は東都の中で一番大きな病院であることで有名である。医師数や患者数は知らないが、この駐車場だけ見ると、テーマパークと変わりない。
香月は1人、駐車場を意味もなくゆっくりと歩く。木々が覆い茂り、鳥のさえずりが聞こえる。端々までは清掃が行き届いていないのか、枯れた木の葉がたくさん雑草の中に落ちている。その落ち葉に反するように、風に揺られて、一枚新緑が、落ちた。舞ながら落ちるそのさまは、まるで人間がもがき苦しむようでもあり、この、木の葉一枚一枚がこの病院で死んでいった人たちに見えてきてしまう。
香月は、勢いよく溜め息をついてから方向転換をする。時刻は午後5時。診察時間は一時間ほど前に終わってしまっている。
もし、非番でなくこの駐車場に車を停めていれば榊に会えるが、つまりその確率は4分の1くらいだろうか。
歩きながら、停まっている車を確認する。前と車が変わっていなければ白いベンツに乗っているはずだが、どうも見当たらない。
「……」
「……びっくりした……」
それでも顔にほとんど出ていないのは何故だろう。職業病だろうか。
「びっくりしたのはこっちだよ(笑)。けど会えて良かった、携帯番号知らないから、どうしようかと思っていたの」
涼しい顔のままの榊に、香月はくすりと笑いながら少しずつ歩み寄る。
「俺に会いに来たのか?」
「そうだよ(笑)。体調は悪くない」
「そうか……。どこかで食事でもするか? いや、まだ早いか」
腕時計を見るその様は見惚れるほどだったが、今はそんなことに時めいている場合ではない。
「あ、そだね。そんなつもりで来たんじゃないけど私もお腹減ってるし」
「そうか……」
榊はすぐに側の白いセダンのキーを開け、助手席のドアを開けてくれる。
「ありがとう……。車、変えた?」
「今車検だから。何食べたい? パスタ」
「うんいいね。本場のパスタじゃないけど、まあいっか」
香月は1人、駐車場を意味もなくゆっくりと歩く。木々が覆い茂り、鳥のさえずりが聞こえる。端々までは清掃が行き届いていないのか、枯れた木の葉がたくさん雑草の中に落ちている。その落ち葉に反するように、風に揺られて、一枚新緑が、落ちた。舞ながら落ちるそのさまは、まるで人間がもがき苦しむようでもあり、この、木の葉一枚一枚がこの病院で死んでいった人たちに見えてきてしまう。
香月は、勢いよく溜め息をついてから方向転換をする。時刻は午後5時。診察時間は一時間ほど前に終わってしまっている。
もし、非番でなくこの駐車場に車を停めていれば榊に会えるが、つまりその確率は4分の1くらいだろうか。
歩きながら、停まっている車を確認する。前と車が変わっていなければ白いベンツに乗っているはずだが、どうも見当たらない。
「……」
「……びっくりした……」
それでも顔にほとんど出ていないのは何故だろう。職業病だろうか。
「びっくりしたのはこっちだよ(笑)。けど会えて良かった、携帯番号知らないから、どうしようかと思っていたの」
涼しい顔のままの榊に、香月はくすりと笑いながら少しずつ歩み寄る。
「俺に会いに来たのか?」
「そうだよ(笑)。体調は悪くない」
「そうか……。どこかで食事でもするか? いや、まだ早いか」
腕時計を見るその様は見惚れるほどだったが、今はそんなことに時めいている場合ではない。
「あ、そだね。そんなつもりで来たんじゃないけど私もお腹減ってるし」
「そうか……」
榊はすぐに側の白いセダンのキーを開け、助手席のドアを開けてくれる。
「ありがとう……。車、変えた?」
「今車検だから。何食べたい? パスタ」
「うんいいね。本場のパスタじゃないけど、まあいっか」