「少しだけど、手がかりが見つかったよ。お前の名前、たぶん有坂怜だと思う。」

彼女の大きな瞳が、一層大きく見開かれる。

「ありさか…れい・・・?」

その反応を見て、確信する。
やはり、間違いない。

直後、怜の表情は苦痛に歪んだ。

「怜?大丈夫か?」

彼女のほうにそっと手をのばすと、身体がびくりと跳ねた。
「あ…、ごめん。なんか、頭が割れそうに痛くて。」

幽霊になるくらいだ。
もしかしたら辛い過去なのかも知れない。
俺、ちょっと軽率だったかも…。


「なにも思い出せない…。」

彼女は目を伏せたまま、その痛みを確かめるように、静かに呟いた。

怜は一体、どんな風に生き、どうしてこの若さで命を落としてしまったのだろう。

もっと早く、まだ彼女がこの世に生きている時に出会っていれば、俺がこんな悲しい未来なんて塗り替えてやったのに。

出会うのが、遅すぎた。
俺は、間に合わなかった。

どうにもならない現実が歯痒くて悔しいよ。